光の旅路(14)2014.10月号

「和紙生産の問題」

 

挿絵1 「観」53×41㎝ 2014年制作 紙本彩色

 

和紙の歴史についてみると、日本書紀によれば飛鳥時代の610年に高麗僧「曇徴」(どんちょう)によって紙漉きの製法が伝えられたとされています。

最も古くから漉かれた紙は麻紙で、原料は大麻の繊維などから漉かれたそうですが、麻と同様に繊維が強靱で、しかも取り扱いがやさしく増産に適した穀紙(こくし)と呼ばれる楮(こうぞ)を原料とした紙が次第に普及しました。

木材パルプなどを原料とした洋紙に比べて和紙は格段に繊維が長いことから、薄くても強靭で寿命が長く、風合いも美しく、その優れた耐久性、保存性から世界中の文化財の修復に使われる一方、日本画用紙、版画用紙、障子紙、封筒、はがきなどにも使用されています。

越前和紙で使用している原料の80%以上は、中国、フィリピン、タイ等で産出された輸入楮です。国産楮としては、水戸の那須楮、四国(徳島、高知等)の楮を利用しています。国産楮は、文化財修復用、ふすま、壁紙、書画用などに利用され、原料は白皮のきれいなものを購入しています。

国産楮は、価格が輸入楮の10倍以上(20倍するものもある)。生産量が少なくなって、10年前頃から必要量を確保することが難しくなっており、現状では何とか必要量を確保しているという状況です。タイ楮を使用した和紙の中には、染料や顔料の乗りが悪いなどの問題があります。

こうした和紙原料の調達が困難になる中、さらには和紙では簀桁(すけた)*1など手漉き用の道具の調達が難しくなってきています。

伝統工芸である和紙を製造していくためには、道具としての「簀」が必要不可欠です。その確保のためにも、国・行政等が率先してその必要性を説き、簀網職人を育成する機関を設く。(簀がなければ伝統的な手漉き和紙は生産できず、いずれ日本から手漉き和紙はなくなります。)

「生産用具の調達先の減少」「生産用具を作る人材や育成する人材の不足」「従来の伝統的な生産用具の入手が困難」「生産用具を製作するコストの増加」

問題は山積みで国の維持・管理のための助成金等による支援によってかろうじて支えられている状況です。

 

1簀桁 (すけた)  

手漉き和紙は簀桁という用具を使ってつくられます。簀桁は竹ひご、萱ひごを使って編まれた簀に桁を取り付けたものです。

簀を編むには強じんな生糸が使われ、一定間隔で糸の締まり具合を均一にしなければなりません。また、漉く紙の種類によって竹ひごの太さは異なります。一枚の簀を編むのに一週間ほどかかります。桁は木目のよく通ったひのき材を使い狂いが生じないように、また原料をくみ込んだときに水平になるように、わずかに山形に湾曲させてつくられています。上桁と下桁で簀を鋏み込み使用します

 

挿絵2「白昼夢」22.7×22.7㎝ 2014年制作 紙本彩色

挿絵3「猫」素描