光の旅路(7)2013.8月号

「二河白道」


「二河白道」 364×236cm 2013年 紙本彩色

 仏教には 沈む太陽が示す
西方の極楽浄土への道を「白道(びゃくどう)」と言い、
中国の高僧善導大師が説かれた
二河白道(にがびゃくどう)という話があります。

 

一人の旅人が、東から西への旅路を歩いていると
突然前方に河があらわれました。
立ち止まって後を振り返ると
盗賊や猛獣・毒蛇が
今にも襲いかかる勢いで追ってきています。
途方にくれる旅人は
河の間に小さく細い白道を見つけました。
しかし白道の左の方には猛火が河のようにうねり、
右手は荒れ狂う河が押し寄せてきます。
進むも死、戻るも死と、全くの絶望状態です。
旅人は恐怖におびえながら、どうしたものかと。
すると、迷っている旅人の耳に、
東の岸から声が聞こえて来ました。
「決心してその白道を歩みなさい。
死ぬようなことはありません。
そこにとどまっていたら死ぬでしょう」と、
そしてさらに進もうとする西の岸からも、
それに呼応するように
「心から信じてすぐこちらに来なさい。
私があなたを守ってあげよう。急流の河、
猛火の河を恐れることはありません」という声が響いてきました。
その声に励まされて 白道を進む旅人ですが、
背後から盗賊や猛獣・毒蛇の声が。
「早く引き返しなさい、その道は通れない、
行けば死ぬだけだ。我々はあなたを殺したりはしない、
引き返しなさい」
旅人はその誘惑に乗ることなく白道を進み、
ついに向こうの岸に到達することが出来たというお話です。

此岸はこの世、彼岸は浄土のことです。
盗賊や猛獣・毒蛇は私たちの心に住む煩悩や悩みなど魔の心であり、
火の河は怒りの心、水の河は貪りの心を意味しています。
白道は彼岸に到ろうとする純粋で清浄な心、
此岸の声の主はお釈迦さま、
彼岸からのそれは阿弥陀さまの呼び声を表しているといいます。
とても無理と思う言葉でも自分の中にある恐怖や誘惑の言葉に惑わされる心が

困難なことのように思わさせているのかもしれません。

 

東方・浄瑠璃浄土(薬師如来)→現世・此岸(釈迦如来)→西方・彼岸・極楽浄土(阿弥陀如来)

 

何もしていなくても時間は過ぎていくもので

生活の中での悩みは尽きることがありませんが

苦労して多くのもの得るか、欲に負け煩悩の河に溺れるか、

その日の自身の行いに信念をもって前に進む勇気も必要なのかもしれません。

 

 

 

挿絵2 「浄瑠璃寺/京都」 

挿絵3 「Sewing shadow」