光の旅路(6)2013.6月号

「雨の気配」


挿絵1 「爽風」 41×53cm 紙本彩色

 

 六月になり今年も梅雨の季節になりました。

新緑の木々は朝露に濡れてより一層深く、

川辺の草も青々とした香りを風にのせています。

 朝露がついてコガネグモの巣が浮かび上がっているところ

雨に濡れた紫陽花の葉にジッとしているアマガエルや

息を吹き返したように動き出すカタツムリなど、

小さな命の存在に気づかされる季節でもあります。

 

梅雨の時期になると蛍をスケッチしに県北へ足をのばします。

広島市内から近いところだと湯来町で六月中旬から七月中旬まで見ることが出来ます。

お薦めなのは満月の時、深く真っ青な空間のなかで蛍が凛々として神秘的なものがあります。

スケッチをしながら目と心に焼き付けては少しずつ形にしていきます。

その場で感じたことや何かしら記憶の跡というか、スケッチと一緒に言葉もメモすることもあります。

ホタルのいる川は、草蒸した中に土の香りが混じったような独特なもので

その香りで蛍の有無があると聞いたことがあります。

地域の方が川を綺麗にし蛍の生育する環境を保護しているおかげで毎年鑑賞することができます、純粋な自然環境での生育は現実では難しいのでしょうね。

両親が子供の頃にはホタルの大群も見れたしマツタケもいっぱい採れたと聞きました。

山の手入れをする人もいて恵みも多かったのだと想像できます。

 調べてみると1960年代に林業労働者が44万人存在したのが2005年には5万人です。今の状況になったのも無理もないことですが、これから豊かな水源を守るために山の環境保全をする中でどんな問題を抱えているのか知らないことが多いなと思いました。

日本画では和紙を使います。和紙の原材料は楮や三椏で作られ楮も原価の安い外国の楮が使われています。

使用している和紙が純国産の原料を使っているかは分からないのですが。混ぜないと今の値段では出来ないと思われます。

和紙を漉く職人さんも年々少なくなってきていますし、日本の伝統工芸と呼ばれるものほとんどが同じような問題を抱えています。

またこの問題もここでピックアップしていければと思っています。

 

話は変わりますが、日本画では和紙を使うときに水に滲むのを防ぐのにド-サ液を塗って防水加工をします。

ド-サ液というのは膠とミョウバンを水で溶かしたものです。

このドーサを塗る作業をする時に気を付けないといけないことは、その日の天気です。

この雨の多い時期にするとド-サが効かないことがあるのです。

最初に塗ったものが効かなければ2度、3度塗っても効きません。

手漉きの高価な和紙ですから梅雨の時期はなるべく避けてするようにしています。

 

挿絵2 「飛躍」 53×33.3cm 2010年制作 紙本彩色